大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所 昭和41年(わ)684号 判決 1967年5月31日

本店

厚木市厚木二九八〇番地

被告

武相砂利株式会社

右代表者代表取締役

吉村武雄

本籍

厚木市中町二丁目六〇三番地

住居

厚木市中町二丁目九番六号

会社社長

被告人

吉村武雄

明治三七年一〇月一日生

主文

被告武相砂利株式会社を罰金二五〇〇万円に処する。

被告人吉村武雄を懲役八月に処する。

たゞし、五年間刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告武相砂利株式会社は本店が厚木市厚木二九八〇番地にあつて、資本金一〇〇万円、砂利等の採取販売を営業としており、被告人吉村武雄はその代表取締役であつて、同会社の業務全般を統括している。

被告人吉村武雄は

一、 昭和四〇年法律三四号によつて改正された以前の法人税法一八条一項による法人税額等の申告に当り、同会社の業務に関し、同会社の昭和三七年四月一日から昭和三八年三月三一日までの事業年度における所得及び法人税の申告として、所得金額を八二五万七一〇円、法人税額を三〇三万五二六〇円と記載した所得金額及び法人税額確定申告書を、昭和三八年五月三一日厚木市厚木八二〇番地厚木税務署で厚木税務署長に提出した。しかし、これは内容虚偽の過少申告であつた。則ち、同会社の右年度における真実の所得金額は五五六六万二〇四円、法人税額は二一〇五万八七〇円であつたのであつて、それをことさら、売上高計上洩れ、期末商品計上洩れ、雑収入計上洩れなどの虚偽に基き所得金額を減少させて計算したためにはならなかつた。この様に、同被告人は、被告会社の業務に関し、会社の法人税として一八〇一万五六一〇円を右不正行為により免かれた。

二、 前記法人税法一八条一項による法人税額等の申告に当り、同会社の業務に関し、同会社の昭和三八年四月一日から昭和三九年三月三一日までの事業年度における所得及び法人税の申告として、所得金額を一〇五一万二九四九円、法人税額を三八九万四九〇〇円と記載した所得金額及び法人税額確定申告書を、昭和三九年六月一日前記厚木税務署で厚木税務署長に提出した。しかし、これは内容虚偽の過少申告であつた。即ち、同会社の右年度における真実の所得金額は八三六六万九八一八円、法人税額は三一六九万四五二〇円であつたのであつて、それをことさら、売上高計上洩れ、期末商品計上洩れ、雑収入計上洩れ、などの虚偽に基き所得金額を減少させて計算したためにほかならなかつた。この様に、同被告人は、被告会社の業務に関し、会社の法人税として二七七九万九六二〇円を右不正行為により免かれた。

三、 前記法人税法一八条一項による法人税額等の申告に当り、同会社の業務に関し、同会社の昭和三九年四月一日から昭和四〇年三月三一日までの事業年度における所得及び法人税の申告として、所得金額を八四三万三九五五円、法人税額を三〇五万四八八〇円と記載した所得金額及び法人税額確定申告書を、昭和四〇年五月三一日前記厚木税務署で厚木税務署長に提出した。しかし、これは内容虚偽の過少申告であつた。即ち、同会社の右年度における真実の所得金額は四七一〇万三七一五円、法人税額は一七七四万九四〇〇円であつたのであつて、それをことさら、売上高計上洩れ、架空給与計上、雑収入計上洩れ、などの虚偽に基き所得金額を減少させて計算したためにほかならなかつた。この様に、同被告人は、被告会社の業務に関し、会社の法人税として一四六九万四五二〇円を右不正行偽により免かれた。

(証拠)

冒頭の事実につき

一、 登記官多田仲雄作成、被告武相砂利株式会社登記簿謄本。

一、 三回公判における被告人吉村武雄の供述。

一、 被告人吉村武雄の検察官に対する昭和四一年五月一三日づけ供述調書。

一、 被告人吉村武雄の収税官吏に対する昭和四〇年一〇月一四日づけ質問てん末書。

一、 ないし三、の事実につき

一、 被告人吉村武雄作成、被告武相砂利株式会社の法人税額等確定申告書三通。(昭和四一年押四六二号の一一ないし一三。)

一、 被告会社備えつけ、総勘定元帳三綴(前同号の一ないし三)。

一、 同、売上集計表一袋(前同号の六)

一、 同、資産関係内訳帳(前同号の八)

一、 念書ほか書面五枚入り、一袋(前同号の九)

一、 被告会社備えつけ、金銭出納帳、四冊(前同号の一〇)

一、 収税官吏高木健二郎作成、被告武相砂利株式会社に関する、昭和四一年一月二〇日づけ、簿外現金売上調査書、同年二月一日づけ、簿外売上額調査書、同年一月二八日づけ、簿外預金残額および受取利息調査書、同年二月二日づけ、池谷勘定調査表、同年一月二〇日づけ、簿外雑費調査書、同年二月三日づけ、簿外借入調査書、昭和四〇年一二月二一日づけ、簿外出資金残高調査書、昭和四〇年一二月二〇日づけ、簿外切り込み仕入数量金額調査書、昭和四一年一月二〇日づけ、架空給与調査書。

一、 収税官吏高木健次郎にあてた、株式会社駿河銀行厚木支店長石田道雄作成、昭和四〇年一二月一六日づけ、株式会社横浜銀行厚木支店長古谷滋夫作成、昭和四〇年一二月一八日づけ、厚木信用組合代表理事大橋市之助作成、昭和四〇年一二月一五日づけ、株式会社三井銀行厚木支店長鈴木吉英作成、昭和四〇年一二月一七日づけ、株式会社日本相互銀行厚木支店長神谷市太郎作成、昭和四〇年一二月一六日づけ、平塚信用金庫厚木支店長中野弘治作成、昭和四〇年一二月一五日づけ、いずれも「定期預金残高および支払利息の証明書」。

一、 前記高木健次郎にあてた、両記石田道雄作成、昭和四〇年一二月二八日づけ、株式会社三井銀行新宿支店長山下陽人作成、昭和四〇年一二月一五日づけ、前記大橋市之助作成、昭和四〇年一二月一五日づけ、前記鈴木吉英作成、昭和四〇年一二月一七日づけ、いずれも「普通預金元帳の写の証明書」。

一、 山田 作成、高木健次郎あて、昭和四〇年一二月二一日づけ、上申書。

一、 黒田誠郎の収税官吏に対する昭和四〇年一〇月一四日づけ、質問てん末書。

一、 三宅敏弘の収税官吏に対する昭和四〇年一〇月一四日づけ、昭和四一年二月九日づけ、検察官に対する昭和四一年五月一八日づけ、各供述調書。

一、 三、五、各回公判における被告人吉村武雄の供述。

一、 被告人吉村武雄の検察官に対する昭和四一年五月一三日づけ、一四日づけ、一六日づけ、一九日づけ、各供述調書。

一、 被告人吉村武雄の収税官吏に対する昭和四〇年一〇月一四日づけ、一五日づけ、一八日づけ、二八日づけ、一一月一三日づけ、一二月一一日づけ、昭和四一年一月二二日づけ、各供述調書。

一、 被告人吉村武雄作成、収税官吏高木健二郎あて、昭和四〇年一二月二〇日づけ、八日づけ、各上申書。

(法令の適用)

被告人吉村武雄の一、二、三、の各行為は、昭和四〇年法律三四号法人税法付則一九条により、この法律でもつて改正された以前の法人税法四八条一項に該当し、刑法四五条前段の併合罪であるが、いずれも懲役と罰金の併科を相当とせず、所定刑中懲役をえらび、刑法四七条、一〇条に従い、犯情の重い二、の罪の刑に法定の 重をした刑期範囲内で、同被告人を懲役八月に処することとする。たゞし、情状にかんがみ、刑法二五条一項一号を適用して、この判決が確定する日から五年間刑の執行を猶予することゝする。

被告武相砂利株式会社については、同会社代表者吉村武雄が同会社の業務に関して前記法人税法四八条一項該当の違反行為をした場合にあたるので、同法五一条一項に則り、前記一ないし三の各罪に関し右四八条一項所定の罰金刑を科することゝなるところ、被告人吉村武雄の免かれた法人税額が各五〇〇万円をこえる場合であるので、情状にかんがみ、右法人税法四八条二項を適用し、各その所定金額の範囲内で罰金額を定めるべく、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項の制限に従い、各罪罰金合算額の範囲内で被告会社を罰金二五〇〇万円に処することゝする。

公判出席検察官 杉原弘泰

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例